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仮面(12)



「社さん、この間の撮影の写真、届いてますよ」

「了解。ありがとう」

仕事に復帰してすぐ。

事務所で溜まっていた仕事をしていると、手元に写真が数枚置かれた。

それは、俺が休んでいた間に撮影された蓮とモデルのレイナとの写真。

現場に居合わさなかった俺は、チェックのため撮影された写真に目を通すことにしていた。

「なかなかいい表情してるなぁ、ふたりとも」

俺がいなくても、きっちり仕事をこなしていた蓮の状況がよくわかった。

マネージャーとして、満足しながら写真を見ていた。

そして数枚写真をめくったところで俺の手は止まった。

「これ・・・キョーコちゃん?」

そこには蓮の横で、はにかんだ表情を浮かべるキョーコちゃんの姿があった。

確かにこの時には、キョーコちゃんが代マネを勤めていたけど、だからってなぜ蓮と一緒に写っているのだろう・・・。

ちょっと撮ってもらったにしては、枚数が多い。

なによりプロの現場で、プロ意識の強いふたりがスタッフに頼んで撮ってもらったとは思えない。

それに、キョーコちゃんとの写真はレイナと撮ったものと張り合う程いい出来だった。

なんとなく現場で起こった事に検討がついて苦笑した。

「おそらく蓮が黙ってなかったんだろうな」

そう呟いて最後の写真を見た時、愕然とした。

蓮の手を頬に当て、切なく見上げるキョーコちゃん。

慈しむように微笑みかける蓮。

ふたりの「想い」が見えた気がした。

誰もその空間を侵すことは出来ないと感じた。

しばらくその写真を見つめていた俺は、ふぅっと息を吐いて呟いた。

「これはプライベートショットだろ?おふたりさん」

けじめをつけるように、写真を仕舞った。

仮面    最終話

「なぁ、蓮。この後ちょっといいか?」

珍しく早く仕事が片付いた日の事だった。

いつになく神妙な顔つきの社さんがそう言った。

「えぇ、別に構いませんよ。打ち合わせですか?」

なにか難しいオファーでもあったのだろうかと俺は思っていた。

だけど、社さんは首を横に振った。

「いや。俳優のお前に用があるんじゃないんだ。『敦賀蓮』個人と話がしたい」

「・・・わかりました。そういう事なら俺のマンションでいいですか?」

「あぁ」

社さんの話の内容の察しがついた。

おそらく最上さんの事だろう。

その事については、俺も社さんと話がしたいと思っていた。

あの日。

最上さんが再び代マネを勤めたあの日以来、俺の中で社さんと張り合う気持ちなど跡形も無く消えてしまった。

彼女を想う気持ちは変わらないが、社さんには適わない。

社さんになら安心して最上さんを任せられる。

だから俺はふたりを見守ろうと決めていた。

その事を社さんに伝えようと思っていた。

リビングのソファーに互いに腰を落ち着けると、社さんから話し始めた。

「お前って意外と嫉妬深いよな」

いきなりの発言にかなり面食らった。

「いきなりなんですか?」

「キョーコちゃんが俺の見舞いに行くって言ったら、お前止めたんだってな」

「あぁ、その事ですか。普通行かないでしょ?女の子が男の一人暮らしの家に」

「まぁな、一般常識としてはそうだけど。お前が止めた理由はそれだけじゃないだろ?」

「・・・・・」

なにもかも見透かされて黙るしかなかった。

そんな俺に社さんは苦笑交じりに言った。

「お前そういう嫉妬心があるんだったら、一般常識楯にとってないで言うことがあるだろ。ちゃんと自分の気持ち伝えないからややこしい事になるんだよな」

「俺は・・・・そんなつもりありませんから。あの一件で俺、気付いたんです」

「気付いたって、何が?」

きょとんとして俺を見る社さんに告げた。

「社さんには敵わないって。だから俺はふたりの事、見守ろうと・・・・」

「はぁぁぁぁ~・・・・」

真剣に話していた途中で社さんがこれ以上はないため息と共に肩を落とした。

あまりの反応に俺は話を続けられなくなり社さんを見た。

社さんはうな垂れていた頭を上げると、俺の方は見ず天井を見上げながら話した。

「お前、本当に救いようが恋愛音痴だな」

「それはまた・・・ずいぶんな言い草ですね」

今度は俺が苦笑する番だった。

だけど、社さんは無表情で天井を見上げたまま続けた。

「お前、本気で言ってるのか?俺とキョーコちゃんが上手くいって、それを傍で暖かく見守るって?」

「えぇ、本気です」

「自分の気持ちはどうでもいいのか?」

「どうでも良くはありませんが・・・・仕方ないですから」

俺がそう答えた時、やっと社さんが俺と視線を合わせた。

だけどその目には怒気が孕んでいた。

「『仕方ない』ってなんだよ、蓮」

その声は静かだった。

だけどキンと冷えたものを感じた。

その雰囲気を感じ取りながらも、俺は自分の考えを話した。

「俺じゃ彼女を傷つけてしまうだけなんです。大切にしたいと思っているのに、うまくいかない。だけど、社さんの傍にいれば彼女はいつも笑っていられると思うんです。最上さんが幸せなら・・・・俺は身を引きます」

「ふざけんなっ!」

俺の言葉が終わった瞬間だった。

社さんが大きな声でそう言いながら俺の胸倉を掴み上げ、ソファーの背もたれに俺を押し付けた。

「『上手くいかない』だと?当たり前だろ!自分の気持ち誤魔化して先輩面しか見せてないからだろ!キョーコちゃんが笑ってたらそれでいいのかよ?!それで本当に幸せだとでも思ってんのか?!好きなやつの傍にいることが幸せなんじゃないのか?!」

こんなに感情をむき出しにした社さんは初めてだった。

怒っているのに・・・・泣き出しそうな社さんの顔を見て戸惑いのあまり言葉が出てこなかった。

何も言えずにいる俺から手を離した社さんは、落ち着きを取り戻して話を続けた。

「なぁ、蓮。お前、今までに一度でも自分の感情をそのまま他人にぶつけた事あるか?『敦賀蓮』の看板に囚われることなく、ありのままの自分を見せた事あるか?」

社さんの言葉に自分の過去を思い返した。

日本に来てから、俺はいつだって『敦賀蓮』を演じてきた。

演じることを忘れた事など一度も無い。

そんな俺だから、『ありのままの自分』などもう自分自身でさえ忘れかけていた。

「恋愛なんて本能だろ?格好がつかない事もあるし、みっともないとこもある。だけどそこを曝け出して本気でぶつかってくもんなんじゃないの?だから傷つくこともある。それを怖がってるのがキョーコちゃんだけどね。まずはお前が自分ぶつけて、殻に閉じこもってるキョーコちゃん救い出してやれよ」

「社さん・・・・そんな事、俺に出来るんでしょうか?」

『敦賀蓮』になる以前は人を傷つける事しか出来なかった俺が、自分を曝け出して本当に彼女を救えるのか。

余計に傷つけてしまうんじゃないか。

そんな不安が俺の中にあった。

すると社さんはポケットから1枚の写真を取り出し、テーブルに置いた。

「俺じゃキョーコちゃんにこんな表情させられない。お前にしか出来ないんだよ」

それはこの間の撮影の時の写真。

最後の1シーンの時のものだった。

俺の手を頬に当て切なく見上げる最上さんに、俺は思わず抱きしめそうになった。

撮影など忘れて思いっきり・・・・。

行動することはなんとか思い留まったが、感情は抑えきれず表情に表れていた。

彼女の演技に自分の感情を引きずり出されたと思っていた。

だけど今、こうして客観的に見れば分かる。

最上さんの表情が『演技』じゃない事が。

「おまえも俳優だ。これが演技かそうじゃないかくらい分かるだろ?」

「はい」

ようやく力強く返事を返した。

俺の返事に社さんはほっとした様に微笑んでいた。

それを見て、俺は心の中にふっと影がさした気がした。

「だけど社さん・・・どうしてわざわざ俺にこんな事を?社さんにとっては良くない展開でしょう。」

俺の問いかけに社さんは一瞬俺から視線を逸らせた。

だけどすぐにいつもの笑顔を浮かべて答えた。

「ばかだなぁ、蓮。お前、俺が本気でキョーコちゃん狙ってるとでも思ってたのか?そんなのお前を本気にさせる為に言ってたに決まってるだろ!第一、俺とキョーコちゃんじゃいくつ歳離れてると思ってんだよ。俺にしてみれば、キョーコちゃんはかわいい妹みたいなもんだよ!」

「でも、社さん・・・」

「いいから!お前はさっさとキョーコちゃんとこ行って自分の気持ちぶつけて来い!」

俺の言葉を制するように社さんはそう言って立ち上がった。

そしてそのまま玄関に向かうと、俺を振り返った。

「じゃあな、蓮。明日は8時にスタジオ入りだからな。浮かれて遅れんなよ」

それだけを告げるとバタンと扉を閉め出て行ってしまった。

誰もいなくなった室内に俺の呟きが響いた。

「社さん、俺俳優ですよ?演技してるのなんて・・・・バレバレです」

社さんだって本気だった。

そんな事は充分分かっていた。

だけど、社さんは最後に『マネージャー』の仮面を被った。

それと引き換えに、俺に『敦賀蓮』の仮面を剥がさせた。

とるべき道は、ひとつしかない。

俺は携帯を取り出すと迷う事無くメモリーを呼び出し発信ボタンを押した。

「遅くにごめん。俺だけど、今から逢えないかな?大切な話があるんだ」

受話器からは、慌てながらも礼儀正しく返事してくる最上さんの声。

それさえも愛おしい。

「じゃあ、だるま屋の近くまで行くから」

そう告げて電話を切った。

近くの公園に車を止め、再び電話すると最上さんは息を切らせて駆けてきた。

公園のベンチに座っていた俺を見つけると隣に座り、少し困惑した様に口を開いた。

「お待たせしました・・・・で、何かあったんですか?敦賀さん・・・」

よほどの事があるのだろうと、不安げな目で俺を見上げる最上さんに微笑みかけた。

「こんな時間にごめん。どうしても最上さんに伝えたい事があってね」

「伝えたい事?」

俺の話の内容に全く検討もついていない最上さんは首を傾げた。

きっと最初は信じてもらえないだろう。

そう思った俺は、少しでも多く想いを伝えようと彼女の両手をとり、俺の頬に当てた。

以前、最上さんが俺にして見せたように。

いきなりの俺の行動に、最上さんはびっくりした表情で慌てていた。

「えっ?!あの・・・敦賀さん??どうかなさったんですか?」

「手が冷たいかと思って」

「いえ・・・・そんなお構いなく」

おばさんの様な受け答えをする最上さんに笑みが漏れる。

俺はきゅっと彼女の手を握り、しっかりと目線を合わせて告げた。

「君が好きなんだ」

「・・・・・・・・・なんの冗談ですか?」

予想通り、最上さんは信じなかった。

だけど、俺には言葉にして伝えるしか方法がない。

彼女が信じるまで、何度でも言おうと思っていた。

「冗談でもなんでもない。最上さんが好きだ」

「やめてください、敦賀さん。いやがらせにも程があります」

「冗談でも嫌がらせでもないんだ。俺は君が好きなんだ」

最上さんはきゅっと唇をかみしめた。

だんだんと瞳に涙が浮かび始めていた。

それを堪えながら、最上さんはふるふると首を横に振りながら、自分に言い聞かせるように言った。

「そんな・・・・そんなハズありません。敦賀さんが・・・私を・・・なんて・・・」

「どうして?俺だって男だよ。女の子を好きになったっておかしくないだろ?」

「そうだけど・・・でも!だからって・・・・私・・・なんて・・・・」

とうとう最上さんの目から一筋涙が零れ落ちた。

心の殻が少しづつ剥がれているように感じた。

俺は頬に当てていた彼女の両手を重ねて包み込み、掌に軽くキスを落としてもう一度告げた。

「最上さんが好きだ」

瞬間、彼女はぼろぼろと涙を零し始めた。

俺はたまらず最上さんの細い身体を引き寄せ抱きしめた。

「そんな・・・・都合の・・・いい話・・・・敦賀さんが・・・・私を・・好き・・・なんて・・・」

涙で言葉を詰まらせる最上さんから、戸惑いながらも心が揺れているのを感じた。

俺は彼女を抱く腕に力を込めた。

「本当だよ。信じて。俺は君が好き。こんなにも愛おしい」

「・・・敦賀さんっ!」

ようやく俺の想いが彼女の心に届いた。

最上さんは俺の名前を呼びながら、ぎゅっとしがみついてきた。

それを受け止める様に、俺も強く抱きしめた。

「好きだよ。ずっと・・・ずっと好きだから」

俺の言葉に泣きじゃくる最上さんは、声も出せずただ頷いていた。

腕の中の愛おしい温もりを感じながら、俺は社さんの事を想った。

やっぱり社さんには敵わない、そう思った。

彼と一緒なら、俺はこの業界のどこまでも登って行けると思った。

(これからもよろしくお願いしますよ、社さん)

面と向かっては言えないけど、感謝と尊敬の想いを込めて心の中で語りかけた。

いつもの社さんスマイルが見えた気がした。




(完)



皆様
仮面 いかがでしたか?

とても素敵な作品ですよね?
途中蓮と社さんのやり取りに・・何度悶えたことか・・・・

イライラしながらも先を読まずにはいられない!!
この素敵な作品を掲載できてよかったです。


melodyのRin 様の作品でした。
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