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仮面(7)

夢を見た。
目の前を歩く敦賀さんを見つけて声をかけた。

『敦賀さん』

だけど、敦賀さんは気付かずにどんどん歩いていく。

『敦賀さん!敦賀さんっ!!』

振り向いて欲しくて必死で呼びかけても、敦賀さんは足を止めることはなかった。

『どうして?!なんで振り向いてはくれないんですか?!!』

泣きそうになりながらそう叫んだ時、ふと敦賀さんの足が止まった。

『敦賀さん・・・』

やっと気付いてくれたのだとほっとした時、綺麗な女の人が敦賀さんの隣に立った。
敦賀さんは笑顔でその女の人を迎え、腰を抱きエスコートする様に再び歩き始めた。
私はそれをただ見送っていた。
胸を焼かれるような痛みを感じながら。




仮面(7)




「キョーコちゃん!キョーコちゃん!!」

意識の向こうから必死に私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「キョーコちゃん、しっかりして!!目を開けて!」

悲痛なまでのその声に段々と意識がはっきりし始めた。
重い瞼をゆっくりと開くと、そこには切れ長の眼が心配そうに私を見下ろしていた。

「よかったぁ・・・・キョーコちゃん、大丈夫?」

ほっとした笑顔を見て、その人が眼鏡をしていない社さんだとやっと理解した。

「社・・・さん?・・・なんで・・・」

意識が戻ると身体がありえない程重く感じ、話すことも億劫に感じた。
たけど自分が置かれている状況が把握できず、まずその言葉が口をついた。

「波に呑まれたんだよ。幸い沖に流されずこの浜辺に打ち上げられたみたいなんだ」

社さんの説明にゆっくりと頭を動かして周りの景色を見れば、見覚えのない浜辺で私は上半身を社さんに抱きかかえられている状態だった。

「あ・・・ごめんなさい、社さん」

慌てて身体を起こした私に、社さんは心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「大丈夫?どこも痛くない?」

「はい、えっと・・・どこも問題ないみたいです」

自分の身体を確認して、どこにも傷ひとつ負っていない事を不思議に思いながらそう答えた。

「よかった。さて、これからどうしようかな・・・」

社さんが考え始め私も漸く頭が働き始めると、身体が冷えていることを感じた。
夏とはいえ、夕方にもなると風は冷たくなっていた。
それは水を含んだパーカーを着た私から体温を奪っていった。
身体を丸め、自分を抱きしめるようにぎゅっと強く腕をつかんだ。

「キョーコちゃん、寒いの?」

私の状態に気付いた社さんが声をかけてくれた。

「えぇ・・・少し・・・」

曖昧に微笑みながら答えると、社さんは表情を引き締めた。

「とりあえず風をよけられるところに移動しよう。キョーコちゃん、立てる?」

「はい」

差し出された手をとって立ち上がり、私たちは岩陰へと移動した。
そして社さんは私を座らせると、くるっと後ろを向いた。

社さんは座らないのだろうかと、不思議に思って声をかけた。

「どうしたんですか?社さん」

「いや・・・その・・キョーコちゃん、その濡れたパーカーとパレオは取った方がいいんじゃないかな?と思って・・」

「あぁ、そうですね」

私はなんの躊躇いもなくパーカーとパレオを取り岩場に広げた。
でもその後も社さんは私に背中を向けたまま立ち尽くしていた。

「社さん、座らないんですか?」

「え?・・・だって・・・キョーコちゃん、水着姿じゃ恥ずかしいかな・・・と思って」

「そんな!水着姿を見られるのが恥ずかしいなら海に来ませんよ。それより社さん、ずっとそうやって立ってるつもりですか?」

「いや・・・まぁ・・・・」

社さんは頭をかきながら俯いて、私なんかよりずっと恥ずかしそうにしながら言った。

「今、俺メガネしてないからちゃんと見えてないし、だからキョーコちゃんの事じろじろ見たりしないから!」

「社さんはそんな人じゃないって分かってますから」

私の答えを聞いて社さんはくるっと振り返り、そっぽを向きながらストンと腰を下ろした。
そして暫く沈黙した後、ぼそっと口を開いた。

「とりあえず、俺たちがいなくなれば社長が絶対探してくれるはずだから。それまではやたらと動かない方がいいと思うんだ」

「・・はい」

「だから、今晩はここで夜を明かす事になると思う」

「わかりました」

きっと・・・・みんな心配してるだろう。
そして自分がした軽率な行動のせいで社さんまで巻き込んでしまった。
その事を謝ろうとした時だった。

「ごめんね、キョーコちゃん」

「えっ?!何がですか?」

謝ろうとして逆に謝られきょとんとしてしまった。
すると社さんは意外なことを言った。

「俺、キョーコちゃんを守れなかった。もし蓮だったら・・・・・キョーコちゃん抱えたままでも波に呑まれず岸に泳げたかもしれない」

「そんな!私の方こそ社さんを巻き込んでしまって・・・・そういえば!社さんはどこも怪我とかしてませんか?!」

私の事ばかり気にかけてくれる社さんに今まで一度も社さん自身の状態を確認していない事に気付いて、ずいっと社さんに近づいた。

「あ・・あぁ・・俺は大丈夫!どこもなんともないから!」

なぜか慌てて距離をとった社さんを不思議に思いながら、私は座りなおした。
そしてお互い何も言わず、ただ時間が過ぎていった。

(寒い・・・・・)

それは夕日が傾き始めた頃から感じ始め、辺りがすっかり暗くなる頃には私は身体の震えを止められない程になっていた。

だけど今は自分を抱きしめ、ただ耐えるしか方法はなかった。
暗くなったせいで、私のこの行動は社さんには分からないだろう、そう思っていた時だった。

「キョーコちゃん、もしかしてまだ寒いの?」

少し離れて座っていたはずの社さんが、すぐ近くに来て私の肩に触れた。

「冷たい!・・・なんでもっと早く言わなかったの!」

「ただ・・・耐えるしかないと思って・・・・」

少し怒ったような社さんの声に肩をすくめた。
こんな岩場で暖をとるものなどなにもない。
言っても仕方ないと思っていた。
社さんは立ち上がると私の背後に回った。

「嫌かもしれないけど、風邪をひくよりはマシだと思って」

そう言って私の後ろに座り込むと、包み込む様に背中から抱きしめてくれた。
冷えた身体に社さんの体温が伝わると同時に社さんに抱きしめられ、妙に緊張しているのを感じた。
だけど私のためにここまでしてくれる社さんに感謝の思いが口をついた。

「ありがとうございます、社さん。すごく暖かいです」

「キョーコちゃんの身体、ほんと冷たくなってる。ごめんね、気付かずに」

「謝らないでください。もとはと言えば、私のせいでこんな事になってるんですから」

「う~ん・・・でも俺、こんな事になってちょっとラッキーって思ってる」

「え?なんでですか?」

「キョーコちゃん抱っこできたから!」

ここに来て初めて社さんのいつもの朗らかな声がした。
その声につられて私は噴出した。

「なんですか!それ!」

「え~、だって普段なら絶対こんな事出来ないし!」

「も~社さんってそんな人でしたか?」

「男なんてみんなそんなものだよ~」

緊張は解け、私はすっかり身体を社さんに預けていた。
社さんもふざけながらもしっかりと私の身体を抱きしめてくれていた。
私はその暖かさに、最初に感じた妙な緊張感は解け居心地の良ささえ感じていた。

「人って・・・・本当に暖かいんですね」

こんなにも近くで人のぬくもりを感じたことは今までなかった。
その暖かさに、心が安らぐなんて知らなかった。
自然と私は社さんの腕に触れていた。

「男は女の人より体温高いからね。余計に暖かく感じるんだよ」

優しく話す社さんに問いかけた。

「どうして男の人の方が体温高いんですか?」

すると社さんは少しだけ腕に力を込めた。

「こうして女の子を暖めるため・・・っていうのはちょっとキザか」

ははっと笑う社さんにつられて私も笑った。

「ふふっ・・・社さんって結構ロマンティストだったんですね」

「う~ん、この状況でロマンを語ってもねぇ。何せ俺たち遭難中だし?」

「そうでしたね」
灯りひとつない暗闇の中。

まして自分がどこにいるかも分からない状況で、不思議と怖さは感じなかった。
惜しみなく与えられた暖かさと、包み込んでくれる腕。
そのおかげで私は安心したのか、眠気を感じていた。

「きっと今頃、社長の命令でみんな俺たちのこと探してくれてるかな」

「・・・・そうですね・・・」

「ここも社長のプライベートビーチからそう離れてないと思うし、すぐ見つかるよ」

「・・・は・・い・・・」

「キョーコちゃん、眠いの?」

「・・・ごめん・・・な・・さい・・」

「いいよ、眠って。おやすみ」

私の意識はそこで途切れた。
その後、頬に柔らかい感触と「好きだよ」って聞こえたのは夢だったのか・・・・。
確認することも出来ないまま、私は眠りに落ちた。






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