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瞳そらさないで(中編)

「君との距離 上河睦月」様よりSSをいただきました。


※上河睦月様のサイトでも掲載しています。
後編を読みたい方は、上河睦月様のサイトへ行ってらっしゃいませ~


蓮が自分のマンションの駐車場に着いたとき、時刻は22時になっていた。
「意外と早かったな…」
明日の朝は早いから出来るだけ早く休むようにと言われた社の言葉がよぎる。

出来る限り早く部屋に戻って身体を休ませることが先決なのもわかっている。でも、なぜか身体が重く動きだそうとはしてくれない。ふう、と息を吐き出すとシートベルトを外して上体をシートに預けた。

「本気で失いたくないなら…か…」

先ほど宝田に言われたばかりの言葉が胸から消えない。キョーコへの気持ちを自覚してから、自分の神経回路は全てキョーコのために作られているのだと錯覚するほど俺は彼女に溺れている。

俺にとって、生涯ただ一人の大切で大切で、仕方のない女の子。それが彼女だ。

「失いたくないに…決まってるじゃないかっ…」

右の拳でステアリングをドンと悔しさを込めて叩いた。そして助手席に置かれていた週刊紙たちに自然と目がいく。それは先ほど宝田が放り投げた代物と全く同じ物には違わないが、違う点といえば全て蓮が個人的に揃えたものだった。

あの報道を見てからずっと考えていた。愛しくて仕方ない少女が他の男のものになったなんて信じたくなかった。

--彼女に会って直接話が聞きたい。
だが神頼みの社にもスケジュール調整が困難とわかって、何度も何度も携帯画面を開き、彼女の番号を眺めた。でも結局、発信ボタンを押すことは出来ないまま携帯を閉じた。

情けない、と自分でも思う。本気で好きになった相手にはここまで臆病になるんだと蓮は生まれて初めて知った。

本人から引導を渡されない限りは、「いい先輩」のままで彼女の傍にいることは許される---。

芸能界一のいい男と称賛されているとは思えない小さな願いに、蓮は縋りついていた。その反面、あの報道が真実でないという確証が欲しくて記事が掲載されている週刊紙を変装までして買い集めた。

けれど、記事を読み進める度に得られるものといえばキョーコとブリッジロックのリーダーである光との熱い関係を知らせるものばかり。

「………捨てよう」
助手席にある全ての週刊紙を丸め、帽子を深く被りサングラスをしてもう一度車を駐車場から走らせる。

---こんなものが車のなかにあるから、暗闇から抜け出せないんだ。

そう思い始めれば部屋のゴミ箱に捨てることさえ躊躇われ、近所のコンビニの外にあるゴミ箱へ捨ててしまおうと思った。

*

駐車場を出て直ぐに、暗闇のなかでまるでそこに光が差しているかのように蓮はその姿を見つけた。

(……いよいよ重症だな。最上さんの幻が見えるなんて)
自嘲しながら幻を振り切ろうとアクセルを踏み込もうとしたとき、幻であるはずのキョーコが嬉しそうに笑って、こちらにぶんぶんと手を振った。

---キキィィーッ!!

アクセルの代わりにブレーキを思い切り踏み込んだ蓮の車にキョーコは駆け寄り、心配そうに運転席の窓際から覗き込むとステアリングに突っ伏したままの蓮がいた。

もしかしたら、敦賀さんらしからぬいまの運転でどこか打ったかもしれない…。心配しながら開いている窓から手を差し伸ばし、柔らかい蓮の髪におずおずと触れてみる。
「あ、あの。敦賀さん…、大丈夫ですか?」
ぴくりと確かに蓮の身体が僅かだけれど動いた。
「…敦賀さん?」
もう一度名前を呼ぶと、すうっと蓮の身体がステアリングから離れてキョーコの方を振り返った。
(------え?)
前髪の隙間から覗いている蓮の瞳に、キョーコは一瞬にして身体を強ばらせる。

いつもの怒らせた時の敦賀さんじゃない。軽井沢でバカ尚に助けられたことを知ったときに…似てる?ううん。でもそれとも少し違うような気がする。どうして?なんでこんな---

「どうしてそんなに哀しそうな目をしてるんですか?」
呟くようにキョーコから落とされたその言葉に、蓮はキョーコを抱き締めてこのままどこかに閉じ込めてしまいたいと思った。

俺の闇の部分をちゃんと見つけてくれるのも、怖がりながらもこんな風に近づいてきてくれるのもキョーコしかいない。

「…敦賀さん?」
無意識的に蓮はキョーコの手を握った。その瞬間、かろうじて残っていたはずの例の箱にかかる鍵が外れかけ、箱が開きそうになる音にキョーコの胸は落ち着かなくなった。

(ダメ!絶対にダメ~!!こんなのは単なるスキンシップなんだからっ。そうよ。敦賀さんを犬とか猿とかリスだとか思えばいいんだ) 

「……でも猿はちょっと失礼よね。やっぱり…」
ぶつぶつと何やら呟き、自分の世界へと入っていってしまったキョーコを眺めて蓮は思わず吹き出しそうになった。
(参ったな。俺の気持ちをこんな一瞬で吹き飛ばせるなんて)
本当に熱愛しているのかさえ疑いたくなるキョーコの変わらなさに、蓮の気持ちが落ち着きさを取り戻しつつあった。
「最上さん」
「やっぱり可愛いリスかしら……って、は、はいっっ!………って、あれ?」
さっきまでの哀しげな瞳をした蓮の姿はもうどこにもなく、キョーコは驚くのも束の間、いつもの優しい先輩である表情の蓮に、ほっと胸を撫で下ろした。
「クス…。どうしたの?こんな時間に」
「あ、あのですね。実は敦賀さんにご相談したいことがありまして…。社さんに電話したらスケジュールがどうしても合いそうにないと伺ったので、失礼だとは重々承知の上でもし敦賀さんの帰り道にお会い出来ればと思って…、いまスタジオからここへ着いたばかりなんです」
「そう、なんだ…。じゃあ電話くれたら良かったのに」
自分があのまま部屋へ帰っていたらこの娘はどうしたんだろう?それを思えば、もう一度外に出て良かったと蓮は心の底から思った。

「じゃあ、部屋へ行って話そうか。乗って?」
「あ…、はい。すみません」
蓮に促され、助手席に乗り込もうとしたキョーコは、座席に置いてあるぐしゃぐしゃに丸められた週刊紙の束を見つけた瞬間、驚いて目を見開いた。
「………っつ」
固まったままのキョーコの様子に気付いて、どう誤魔化そうかと頭を働かせたが、蓮は直ぐにそれをやめた。

(もう隠すのは……無理だ)

慌てもせず、落ち着き払った様子で「ああ、これ邪魔だったね。ごめん」と言いながら週刊紙の束をどかす蓮の反応に、キョーコは訳が分からなくなっていた。

(あれって絶対あの記事を見たのよね…。どうして怒ってないんだろう?)

いつもの敦賀さんなら、まだまだ役者として新人の私があんなスキャンダルで記事になるなんて、怒ったり呆れたりするはずなのに、なんだろう…、この敦賀さんの反応は。

もしかして、呆れるとかを通り越して……

「ほら、座って?」
思考を蓮の低く優しい声に中断され、キョーコは早く蓮に真実を打ち明けようとここへ来る前同様に決意を新たにしながら乗り込んだ。





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